抗PD-1抗体は何度も使える?
つい先日まで行われていたWCLC 2022、今やっと録画視聴が追い付いてきたところである。(コロナ禍での学会Web参加にありがちな状況だろう…)
さて、今日は関連の話題としてICIのリチャレンジについて考えてみたい。
ICIのリチャレンジの対象は、おそらく下記2パターンに分かれるだろう。
- irAEによりやむなく中断した場合
- CR、または2年完遂後にPDになった場合
①に関しては、後ろ向き解析において、リチャレンジのDCR=75%(N=40)、またOSの改善も認められたと報告されている。(J Yang et al. Transl Lung Cancer Res. 2022)
➁に関しては、WCLC 2022にてKEYNOTE試験のpooled解析が発表され、Pembrolizumab単剤の結果はDCR=73.7 (N=40, 95% CI=60.3-84.5)であった。
AEについては、①の場合AEの発現時期が早まる可能性を考慮する必要がありそうだが、いずれも発現率や重症度が上昇するような傾向は出ていない。
従来のchemotherapyと比較すると、有望な選択肢と言えるのではないだろうか。
ではリチャレンジの効果を規定するものはなにか?
ここに関しては、症例報告レベルではあるが、先日面白い文献を見つけた。Nivolumab中断症例2例において、Nivolumabのリチャレンジは、T細胞表面上における抗PD-1抗体の占有率が低い症例で有効であったと報告されている。(Nose et al. Mol Clin Oncol. 2022)T細胞に抗PD-1抗体がほとんど結合していない状況下での再発は、おそらく抗PD-1抗体の薬剤プレッシャーとは無関係の増悪であるため、リチャレンジが効果を示したのだろう。一方、T細胞にまだ抗PD-1抗体が十分結合している状況下での再発は、抗PD-1抗体に対する獲得耐性メカニズムにより再発したと考えれば納得がいく。
今後抗PD-1抗体のリチャレンジは、日本においてどのような位置づけになるのだろうか。
そして、抗PD-1抗体のリチャレンジの効果はT細胞上の抗PD-1抗体の結合度合で予測できそうであるが、果たして抗PD-L1抗体や抗CTLA-4抗体のリチャレンジは、どこで予測できるのか…?