肺がんにおける第3世代EGFR-TKIの真の使い所を再考

非小細胞肺がんにおいて第3世代EGFR-TKIと言えば、日本ではosimertinib(Osi)が広く使われている。

OsiはAURA試験にて第1/2世代EGFR‐TKI耐性後にT790M変異が発現した症例をターゲットとして開発が開始された薬剤だ。
その後、初回治療となるFLAURA試験の結果から、EGFR変異陽性NSCLC全例に対する初回治療の標準治療として使われているのが現状だ。

更には、第1/2世代EGFR‐TKI耐性後に関してもOsi使用の対象症例が見直され始め、T790M陰性例に対する効果を検討したKISEKI試験も実施された。ある程度の効果が認められたことから、二次治療以降においても全例にOsi使用のチャンスが得られることも期待できそうだ。T790M変異陽性例に比べて少し見劣りする有効性ではあったものの、これはT790M陰性自体が問題なのではなく、第1/2世代EGFR‐TKI耐性メカニズムがヘテロとなり治療ターゲットをひとつに絞りにくくなっている可能性なども考えられるだろう。

つまりOsiを含む第3世代EGFR-TKIにおいて、開発初期の標的であったT790Mが頑健なバイオマーカーという訳ではなさそうだ。
そこで今回注目したのが、第3世代EGFR-TKIであるLazertinibの効果に関する最近の論文だ(Hong MH et al. JAMA Oncol 2024)。

第1/2世代EGFR‐TKI後に増悪し、頭蓋内転移がみられる症例に対してLazertinibの効果を検討しているが、T790M変異の有無にかかわらず、高い効果が得られ、特に頭蓋内奏効率も十分に認められる結果であった。

第3世代EGFR-TKIの強みのひとつは脳への移行性の高さだろう。T790M変異という軸ではなく、脳転移の有無という患者像が薬剤選択の基準になっても良いかもしれない。これは、治療選択のために再生検による遺伝子検査の必要性がないという点でもメリットがありそうだ。つまり、第1/2世代EGFR‐TKI後に脳転移が出てきた場合には、T790M変異にかかわらず放射線などの局所療法ではなく、第3世代EGFR‐TKIを使うメリット、妥当性が示唆される結果といえる。

現在のEGFR変異陽性例に対する初回治療は、第3世代EGFR‐TKI(Osi)一択という根強い考えがあるが、特に脳転移リスクの高いEGFR変異症例においては、第1/2世代から第3世代EGFR‐TKIへとシークエンシャルにつなぎ、脳転移をうまく制御しながら治療を継続していくことで、さらなるOS延長が期待できるかもしれない。

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