手術の最適なタイミングは?
先日の肺癌学会関東支部会にて、集学的治療のセッションにおけるコンバージョン手術の議論を聞きながら色々と想像が膨らんだので、備忘録も兼ねて徒然なるままに。
従来、手術は腫瘍が限局しており全身療法が"不要な"早期肺がんに対する根治を目指した治療法であり、それは現在の周術期薬物療法の開発においても、原則として”切除可能”な症例が対象となっている点は留意すべきである。
しかしながら、TKIやICIといった昨今の薬物療法の進歩に伴い、実臨床の議論の中では高い薬効を持つこれら薬物療法の力を借りて、術前治療として切除可能性を追求する傾向が見られる。つまり、切除の賛否が分かれるIII期N2b(multi-station)のような症例においても“根治“の可能性を拡げる目的で"術前"薬物療法を限定的に実施し、手術に持ち込もうという考え(戦略?!)である。
もう少し拡大解釈して、全身療法を先行し、ここぞというタイミングで残存病変に対して手術を適応する「コンバージョン手術」を選択肢として考えるのはどうだろうか。術前薬物療法とは逆に"IV期"治療として薬物療法を十分に施行し、手術の可能性を辛抱強く待つという考えだ。特にTKIやICIの効果が期待できる症例(現状バイオマーカー探索を含め、未だ議論の余地は多々あるが)にとっては、ある意味では非常に有望な治療法となり得る可能性もあるだろう。
III期N2bを含めて切除可否の判断が難しい症例に対しては、術前薬物療法を実施するか、PACIFICレジメンにするか、の二択の議論が多く見受けられるが、上述したようなコンバージョン手術を見据えた薬物療法を先行するという第3の選択肢も悪くはないかもしれない。もちろん、コンバージョン手術によって根治率が上がるのか(この場合、手術施行の意義が問われるだろう)、術後アジュバント薬物療法の省略が可能になるのか(術後フェーズを術前に持ってくるというイメージか?)、まだまだ議論すべき点は多い。しかし、この第3の選択肢による恩恵を受けるのはどんな集団か、今後も考え続けてみたい。