進行期非小細胞肺がんの一次治療:抗PD-(L)1抗体単剤か、chemo併用か、それとも?
進行期肺がんにおける抗PD-(L)1抗体とchemoの併用においては、PD-L1発現ステータスに応じてICI単剤では不十分な場合にchemoを併用する、という考え方になっている。
しかし、今回注目する論文は、そもそもキードラッグである 抗PD-(L)1抗体が無効な集団がいる、ということを思い出させてくれる報告だ(Xu J et al. Cancer Cell 2024)。
同報告においては、TMB、ITH(腫瘍内不均一性)、CIN(染色体不安定性)という免疫環境に影響し得る3つの因子およびctDNAクリアランスに着目し、抗PD-(L)1抗体+chemo併用を”chemo単剤”と比較している。その結果、PD-L1発現とは異なる上記指標により、「chemo単剤でも十分良好な予後が得られる集団」「ICI併用により予後改善が見込まれる集団」「chemo単剤で予後不良かつ抗PD-(L)1抗体で全くリカバーできない集団」の3パターンに分けられた。
この結果は、PD-L1発現によって、ICI単剤かchemo併用かを判断することの限界を示していると考えられる。
もちろんPD-L1発現のレベルよって、抗PD-(L)1抗体に奏効する症例/奏効しない症例をenrichすることは可能だが、実はICI単剤では不十分だからと言ってchemo併用を使っている集団の中にはchemoの効果しか得られない集団がいることが予想される。つまり、現在の”抗PD-(L)1抗体単剤かchemo併用か”、という考え方が適切とは言えないかもしれない。
今回の報告の中で使われたバイオマーカーとPD-L1発現率との掛け合わせた結果も気になる点である。今後はPD-L1という単独のバイオマーカーに固執せず、chemoとの併用、または他の薬剤(抗CTLA-4抗体やADCなど)の併用によるescalationが必要な症例を、複数のバイオマーカーを組み合わせて個別に判断していく必要がありそうだ。