なぜ分子標的薬は腫瘍細胞を根絶できないのか?

分子標的薬は高い腫瘍縮小効果を持つにも関わらず、ほぼ全ての症例でいつかは必ず再発するという欠点を持つ。一方、ここ数年で急速に開発が進んだ免疫チェックポイント阻害剤 (ICI)は、がんの種類に関わらずある一定の割合で根治を実現させてきた。この違いはどこから来るのだろうか、その理由について分子標的薬の耐性機序に着目して考えてみたい。

手強い耐性株

分子標的薬に対する抵抗性には、1)治療により薬剤感受性細胞が除去されるとともに、既存の微量な非感受性細 胞集団が増殖していくこと(初期耐性)、2)治療への長期暴露によりde novoの耐性変化が現れること(獲得耐性)の二種類が挙げられる。初期耐性は早期脱落によりORRやPFSの成績悪化につながる因子であり、獲得耐 性は効果の持続を左右する因子と考えられる。すなわち、一度は完全に腫瘍を制御できたかに見える奏効症例でも最終的には抵抗性となる、この獲得耐性メカニズムこそが、分子標的薬の根治を妨げている要因である。

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