EGFR変異陽性肺がんに対する最適な術前療法は?:TKI vs ICI

術前療法としてのICI+chemoは、Checkmate-816の結果を根拠にFDAでは超迅速承認され、ドライバー変異の有無に関わらず使えるレジメンとなっている。
そこで今回は、特にEGFR変異症例における最適な術前療法について、最近のエビデンスをもとに考えてみる。
ちなみに、以前の記事の中で、術前療法としての免疫チェックポイント阻害剤(ICI)+化学療法(chemo)の是非についてもまとめているのでご参照いただきたい。

EGFR変異症例に対する術前療法としてのICIの効果については、コンセンサスが得られるほどのエビデンスはまだないのが現状だ。
例えばNEOSTAR試験の中では、EGFRを含む遺伝子変異症例に対する効果の低さを示唆するサブ解析のデータが報告されている。(ASCO 2021 #8542 )一方で、EGFR変異症例においても、ある一定数の病理学的奏効が得られることを示唆するデータも出てきている。(Zhang et al. NPJ Precis Oncol 2022

ちなみにEGFR-TKIのデータに関しては、第II相試験であるCTONG1103試験やNEOS試験において、病理学的完全奏効率がほとんど得られていない(CTONG1103:pCR 0%, NEOS:3.6%)。この理由は、TKIに対する非感受性の細胞クローン(例えば、drug tolerant cellや、既存の耐性クローンなど)がある一定数残ることなどが考えられる。現行のosimertinibの術前療法を検討した第III相試験であるNeo-ADAURA試験の結果が待たれる。

確かにEGFR野生型と変異型で比較すれば、ICIの効果は変異症例の方が低くなるかもしれない。しかしEGFR変異症例の中で比較したときに、術前治療としてICIよりTKIをやるべきだ、と断定できないのではないか。(術度療法に関してもこちらの記事にもある通り、今後検討が必要だろう。)

進行期におけるEGFR変異症例に対するICIの効果が限定的であることから、 ICIを含む術前療法の多くの試験において、EGFR変異症例は対象から除かれており、データは非常に限られている。また、EGFR変異症例の中でも、さらにuncommon変異の有無によっても効果に差が出てくることが予想される。

現在、EGFR変異症例を対象として、術前療法としてのatezolizumab+chemo+bevacizumab併用第II相試験を併用したネオアジュバント療法を評価する試験(NEO-DIANA試験)も実施中である。まだまだEGFR変異症例に対するICIの効果も検討の余地がありそうだ。そして、今後もしEGFRの変異の有無で治療選択が変わってくるのであれば、周術期(早ければ手術の前の診断時)に、遺伝子検査をする必要性が出てくるかもしれない。

=EGFR uncommon mutation=

uncommon mutationと言っても、その種類は複数ある。そして変異の種類によって、PD-L1発現やTMBなど免疫環境が異なっていることが知られている。(Lei et al. Front Immunol 2022Ma T et al. Front Oncol 2022
また、uncommon mutationと言っても、common mutationとの共変異やuncommon mutationが複数入る場合など、様々な状態が考えられる。そのため、どの変異がいくつ入っているかによって薬剤への効果が違ってくると考えられるが、そこまで加味した個別化治療はいつか実現するのだろうか…。

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