ICI治療において化学療法は積極的に併用すべきか?:進行期肺がんを例に考える

進行期肺がんにおいて、ICI単剤とICI+化学療法併用のどちらが優れているのだろうか。

以前から、FDAのpooled解析(@ASCO 2021)やNEJ057試験(@ASCO 2023)において、少なくとも高齢進行期肺がんに対しては、ICI単剤が適していることが示唆されてきた。

また海外では、高齢者におけるICI治療の位置づけや意義が検討されたイタリア胸部腫瘍学会(AIOT)による国際専門家パネル会議の結果も報告されており、ICIに化学療法を上乗せることに慎重になるべきという結論が出ている(Gridelli C et al. ESMO open 2023)。

そして、最近論文化された前向き試験IPSOS(Lee SM et al. Lancet 2023)の結果から、プラチナ製剤不適格症例(年齢中央値75歳)にAtezolizumab単剤が有効であることも示された。

以上のことから、ICI+化学療法の併用が難しいと判断される背景因子を持った症例に対しては、ICI単剤が選択肢と言えるだろう。

しかし…化学療法ができない症例に対する治療をどうするか、という検討ばかりされているように見えるが、そもそも化学療法併用が前提で良いのだろうか。

これまでも何度か紹介している論文(Palmer et al. Cell 2017)では、(少なくとも長期生存という観点では)相加・相乗効果は限定的であり、どれが効くか分からないから併用するしかない状況があるように感じる。つまり、化学療法が本当に必要な症例を絞るバイオマーカーがないことが、今の一番の問題なのではないか。

これから進行期だけでなく周術期にICIレジメンが導入され、治療目的が根治になってくるため、リスク・ベネフィットをより長期的に評価し、適切な薬剤を適切なタイミングで使っていくことが重要になってくると思う。その一歩として、例えばASCO2023で発表されたEAST ENERGY試験のように、化学療法フリーの可能性の検討も進んでいくことに期待したい。

化学療法を“できるから使う”、ではなく“必要だから使う”という考え方にシフトしていくべきではないだろうか。

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