術前ICIと手術可否の判断:誰にどのタイミングで実施するのが最適か?
以前の記事の中で、現在の診断基準では“切除不能”とされている症例が、周術期薬物療法の開発に伴い切除可能になり得ること、そしてそのためには術前治療前後でのMDT(多職種間の連携/チーム医療)による評価が必要になることを書いた。
先日、まさにそのフローを検討する治験デザインが発表された(MDT-BRIDGE: Abst# 115TiP @ESMO-IO 2023)。治療前MDT→術前のICI+chemo途中で再度MDTによる切除可否の検討 → A) 切除可能ならば手術後にICI、B)切除不可ならばCRT後にICI、という具合だ。
もう一つ別の試験としてMDTによる振り分けを実施したデータというと、中国で実施された試験を思い出す(NCT04580498)。切除不能のIII期NSCLC患者に対し、術前にSHR-1701というPD-L1とTGF-βを標的とした二機能性融合タンパク質(Bifunctional Fusion Protein)投与後にMDTを実施して切除可否を判断し、手術もしくはCRTを実施するという試験デザインであった。結果的には手術を受けた症例の方がEFS改善が良好であり、術前治療によるコンバージョン手術への期待が高まる結果であった(Wu YL et al. Abst#LBA5 @ESMO-IO 2022)。
こうなると、今後は手術の適応範囲が今以上に広くなる可能性が見えてくる。もちろん術前評価で切除可能と判断された症例では、術前ICIレジメン施行によって一定の割合で切除不能となるリスクがあることを忘れてはならない。ICIに初期耐性を呈する懸念もあり、PDインオペとなった場合、その後のCRT+ICIが有効かつ安全かという疑問も残る。結局のところ、手術がギリギリできるかどうかのボーダーライン症例に対して、最初からPACIFICレジメンにすべきか、それとも切除可能を期待して術前(+術後)ICIに進むのか、どちらの方が寛解や予後延長がより期待できるかというCQに答えを出すのは難しそうだ。
切除可否の判断基準*やタイミング、そして多忙なスケジュールの中でのMDT実施による評価など、これらは来年も引き続き議論が必要な部分だろう。
*ESMOでは手術可否の基準についてEORTCのコンセンサスが話題となっていたが、これは治療介入前の状況を前提に議論されていた。今後、周術期ICI治療が導入されることで手術可否のステータスや判断もタイミング次第で変化することが予想される。"Resectable" is NOT equal to "should resect"であると同時に、"(診断時の)Should not resect" is NOT equal to "Unresectable"と言えそうだ。
最後に、ドライバー変異陽性症例を対象とした周術期レジメンは、現時点での実臨床では術後TKIだけである。ドライバー変異陰性症例では、手術の可否やレジメン選択がMDTによって様々に検討していくことが議論される一方で、今後ドライバー変異症例でも長期生存を目指して選択肢が増えることに期待したい。
これからは特に、がん治療においては“Simple is best”とはいかないだろう。
