免疫チェックポイント阻害剤は術後より術前がbetter?:腫瘍内の免疫細胞にフォーカス

術前ICIは術後ICIよりも腫瘍内T細胞クローンがより顕著に拡大する

まず前臨床のエビデンスとして、マウス乳がんモデルを用いた基礎的な検討を行った報告がある(Liu J et al. Cancer Discov 2016)。
原発巣切除の状況下で、術後ICI(aPD-1+aCD137抗体)治療と比較して術前ICI治療の方が末梢血および臓器に浸潤する腫瘍特異的CD8+T細胞の拡大が有意に認められ、抗腫瘍効果が高く予後の改善が得られた。
以上の結果を含め、研究グループは、術後治療と比較して術前ICI治療が有意に高い治療効果を示す可能性に言及している。

この前臨床でのエビデンスに続き、Blank CUの研究グループは、ステージIIIメラノーマ症例に対して術前または術後ICI(Nivo+Ipi)どちらが優れているかランダム化比較試験にて検証した(Blank CU et al. Nat  Med 2018)。
その結果、前臨床の結果を再現する形で術前ICI投与群の方が良好なシグナルが得られており、基礎的な検討として腫瘍局所に最も多く存在するT細胞クローンを特定すべく、両群における投与前(ベースライン時)と治療6週後の腫瘍局所に浸潤するT細胞と末梢血中のT細胞のTCRシーケンス解析を行なっている。
その結果、術前ICI投与群では術後ICI投与群よりも
・治療開始6週後の末梢血中に存在する腫瘍浸潤T細胞クローンの数が全般的により拡大していたこと.
・ベースライン時に末梢血中に存在していた腫瘍浸潤T細胞クローン数の拡大が起こっていたこと.
・加えてベースライン時には存在しなかったが、ICI投与後に新規に検出されたクローン数の拡大が起こっていたこと.
などが示唆された。また、ICI投与タイミングに関わらず、再発例ではICI投与後に新規に検出されたT細胞クローンの数が無再発症例に比べて少ない傾向が示唆されたことは非常に興味深く、エピトープ拡散(epitope spreading)と再発や持続的奏効との関与も考えられるだろう。

CD103+ (Batf3+) DCと腫瘍ドレナージリンパ節(TDLN)

上述の前臨床と同じグループによる別のマウス実験によって、
・Batf3+ DCの欠損が原発腫瘍および末梢血中の腫瘍特異的CD8+T細胞の減少や長期生存の低下と関連すること.
・ステージIIIメラノーマ患者を対象としたOpACIN試験でICI治療前の腫瘍内Batf3+ DCシグネチャーが臨床転帰と相関していた(Batf3+ DCシグネチャーが低いほど再発をきたしやすい)こと.
などを報告している(Liu J et al. Oncoimmunol 2018)。

また、別の研究グループによって、
・Batf3はCD103+ DCの発生に必要であること.
・エフェクターT細胞の腫瘍内への浸潤はCXCL10を産生するCD103 (Batf3)+ DCの腫瘍内の存在有無に依存すること.
・CD103 (Batf3)+ DCを介したエフェクターT細胞のリクルートメントの欠如が免疫制御を妨げること.
などが報告されている(Spranger S et al. Cancer Cell 2017)。

CD103 (Batf3)+ DCは腫瘍内でクロスプレゼンテーションが可能であるが、その他にも腫瘍ドレナージリンパ節(TDLN)に移動して腫瘍抗原をT細胞に提示できる特殊な抗原提示細胞(APC)である。
ICI投与前に外科手術によってTDLNを郭清してしまうことで、このCD103 (Batf3)+ DCによるT細胞プライミングの低下、T細胞クローン数の拡大やエピトープ拡散が損なわれてしまうことが考えられないだろうか?

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