臨床試験デザインにおいて考えるべきポイント整理(その1)

本来新しい薬剤の効果を評価するための臨床試験、しかし最近は、既に承認されている薬剤の使い方や使うタイミングの評価を目的とした試験も増えてきたように思う。例えば、進行期で使われている薬剤を周術期に導入する目的や、単剤で使われている薬剤の新規併用レジメンを開発する目的で実施する試験である。
また、薬剤開発スピードの加速や、実施数の増加なども、昨今臨床試験を取り巻く環境変化のひとつである。

以上の背景から、今後の臨床試験(特にランダム化比較試験)デザインの在り方について再考してみた。

比較対象群

治療薬が乏しい時代には、新薬はプラセボと比較することが当たり前であった。しかし、治療薬の数が劇的に増えてきた昨今、治験のためにプラセボを投与することが疑問視され始めている。
そこで大腸がんでは、過去の治験におけるプラセボ投与症例が格納された大規模なデータベースから仮想的にプラセボ群を作る試みが出てきている(Yoshino T et al. Natu Med 2023)。一方、症例数が少ないために大量の治験データの蓄積が困難な希少疾患では、比較対象にリアルワールドデータを使うという提案もあるようだ。
これらの取り組みにより、新薬となる期待が寄せられる試験薬のエビデンス構築(=治験)のために、プラセボ群に割り当てられる患者さんがいることに対する倫理的問題は解消しそうだ。しかし、患者背景のばらつきなど解決すべき新たな問題がありそうだ。また、がん種によっては実臨床で既に多くの薬剤が使用可能であり、対象群がプラセボではないなんらかの標準治療であるケースも多いため、この変化にどれだけ柔軟に対応できるかも課題となりそうだ。

クロスオーバー

多くの試験では、クロスオーバー”許容”という単語が使われている。しかし本来であれば、クロスオーバーは”認めない or 強制する”のいずれかであるべきだ(Gyawali B. Nat Rev Clin Oncol 2023)。

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