これからの非小細胞肺がん治療における二重特異性抗体への期待:基礎から臨床まで
分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、ADC、そして最近では二重特異性抗体の開発がアツい。
二重特異性抗体の中でも最近注目している薬剤のひとつに、VGEFとPD-1を標的とするIvonescimabがある。これは、以前書いた記事のコラム中に描いた一番右に当たる構造だ。細胞膜上タンパクPD-1と遊離タンパクVEGF、それぞれを標的とする抗体結合部位が上下に合体した構造となっており、VEGFへの結合により抗体が連なってPD-1への結合能が増強される。また、逆にPD-1への結合によって抗体が凝集化し、VEGFへの結合が増強される。この相乗的な効果によって、加速度的に標的への選択的かつ効率的な結合が実現されるわけだ。また、腫瘍局所のVEGFは、抗腫瘍免疫において負の作用があることが知られている(例:樹状細胞の成熟化抑制、CD8+T細胞の疲弊亢進、MDSCの活性化など; Patel SA et al. Clin Cancer Res 2023)。