体内時計を制するものは、がん治療を制す!?:免疫療法のタイミングを考える(その2)
前回の記事の中で、昨年注目を集めた体内時計とICIの効果(投与タイミング)についての話題を取り上げた。そこで引用した初のランダム化試験であるASCOのデータは、最近Nature Medicineに掲載され、そのインパクトの強さを示しているように思う(Huang Z et al. Nat Med 2026)。しかしながら、基礎的なメカニズムが分からないと、臨床データがどうも腑に落ちない。
そんな中、詳細な基礎的メカニズムを検討したデータが(まだ査読前段階ではあるが)出ていたので書き留めておく(Lichterman JN et al. Preprint @ bioRxiv 2025)。
この報告によると、体内時計としてのカギを握るのは、ケモカインCx3cl1遺伝子の転写を制御しているBMAL1。特に樹状細胞(cDC)におけるBMAL1がCX3CL1の発現を促進させ、その受容体CX3CR1をもつCD8+T細胞を腫瘍内へ効果的に誘導して両者が近接する微小環境が事前に形成されていることが、ICIの高い効果につながっている(奏効の条件となっている)ようだ。
また、もうひとつ興味深い点として、“初回の”投与タイミングの重要性を示唆するデータがある。初回さえゴールデンタイムに投与すれば、2回目以降の投与時間は効果にさほど影響しない。一方で、初回にゴールデンタイムを逃すと、2回目以降で挽回はできないようだ。この結果は、前回の記事で言及した実臨床データ(Nomura M et al. Esophagus 2023)から示唆された“初回の”投与の重要性と一致する。ICIの半減期は非常に長いにもかかわらず、「初回投与による免疫応答のスイッチがどのタイミングで入るか」が、その後の免疫療法の効果全体の方向性を決める、ということになるだろうか。
最後に、DCにおける時計であるBMAL1欠損マウスにおいても、リコンビナントCX3CL1を局所投与することで、ICIの治療効果が完全に回復することが示され、今後の研究や治療標的への応用に期待できそうだ。例えば、体内時計の乱れや投与時刻に制約がある場合でも、下流のケモカインを補填することで治療効果を最適化できる可能性が出てくるだろう。
さて、ICIのバイオマーカー研究につきまとう問題として、一つの因子で効果を予測することが不可能、という免疫システムの複雑さが挙げられる。今回のCX3CL1- CX3CR1軸の解明により、ICIの効果予測因子がまたひとつ加わった、という印象だ。だが、このバイオマーカーをICIの投与時間でコントロールできるとしたら、実臨床にも導入しやすい。 実地臨床での応用に向けて期待がかかるが、Huang Z et al. Nat Med 2026に続く前向き第III相の臨床試験として、どのような試験デザインで検証すべきだろうか。


