ASCOの進行期非小細胞肺がんのデータを振り返る(Part1)

前回の記事で取り上げたALK陽性肺がんについて、進行期でも動きがありそうなので、ここで取り上げたい。

ひとつはCROWN試験の7年追跡結果。PFSのK-M曲線が3年を過ぎたあたりからプラトーに近付いており、脳転移に関しても長期に制御できている。特筆すべきは、途中で減量した症例は、減量をしなかった症例と全く遜色ない(むしろより良好な)PFSである点である。ただし、今回はおそらくAEなどなにかの事情で減量の判断となったことが予想され、減量のタイミングなど詳細情報もない。特にlorlatinibの毒性が実臨床における使用のハードルになっている日本においては、どの程度積極的な減量をしても効果が劣らないのか、が知りたいところだと思う。(J-ALEX試験ならぬJ-CROWNを実施してほしい。)

もうひとつ、次世代のAKL-TKIとして、neladalkib*のALKOVE-1試験の結果が報告された。Neladalkibは、lorlatinibでは効果が弱かった変異タイプにも効果を示すと基礎データが報告されており、特に従来のTKIとの結合が弱いG1202R変異にも強力に結合することで耐性克服が期待されている。実際に今回の臨床データでは、lorlatinibや他のALK-TKI後であっても、一定の効果を示していた。一方で、preliminaryなデータとして出されていた初回治療の効果は更に高いものであり、実際既に初回治療を対象とした第3相ALKAZAR試験(vs Alectinib)が進行中とのことだ。もうひとつこの新規TKIの興味深い点として、lorlatinibで問題となっていたTRKBに対する非特異的な結合が立体障害により阻害される構造になっている点だ。まだ安全性データの詳細は不明だが、本当に神経毒性の回避につながるのであれば、有効性のみならず安全性においてもかなり有望なTKIと言えそうだ。

*neladalkibはNuvalent社が開発している薬剤であったが、先日GSKがNuvalentを買収したというニュースがあり、ROS1・ALK・HER2を標的とする次世代の薬剤を武器に、今後ら肺がん領域へ本格参入することが期待される。

さらに、TKIの重要性の高まりを感じさせるデータをふたつ紹介する。

ひとつは、EGFR exon20insを対象としたsunvozertinib**のWU-KONG28試験。高いクロスオーバー率にも関わらず、PFS2も有意な効果を示しており、TKIファーストの重要性を感じされる結果だ。現在のSoCであるamivantamab+化学療法と比較すると、sunvozertinibは化学療法フリーかつ経口薬という利便性もあり、実臨床におけるメリットも大きい(脳転移に対するメリットが少し低そうに見えるのが気になるが…)。今後は、変異バリアントや共変異の有無、PD-L1等による使い分けや、TKI→amivantamabのシーケンスの検討も必要になってくるだろう。

**先日sunvozertinibをアストラゼネカ社が獲得したというニュースがあった。EGFRのmajor変異症例に対する治療は、長らくosimertinibが独占状態であったが、今後minor変異に対する進出も狙っているのかもしれない。

一方で、amivantamabも負けてはおらず、CHRYSALIS-2試験のコホートCとして、uncommon変異に対する初回治療の効果が報告されていた。現在の実臨床で使われているEGFR-TKIと比較し、大幅なOS改善が見込まれ、先ほどとは逆にamivantamabがTKIよりも優先的に使われるようになるかもしれない。CHRYSALIS-2は、AEマネジメントを検討したCOCOON試験やSKIPPirr試験、また皮下注を検討したPALOMA-3試験などが開始する前に実施された試験であり、AEマネジメントや皮下注の導入により、更に安全性が改善する期待も持てる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です