II-III期非小細胞肺がんの術前ICI+chemoで「手術不能」となった場合の根治的CRT±ICIオプションのリスクに迫る
以前の記事で、「免疫療法(ICI±化学療法)」が病期を超えたNSCLCの初回治療になり得る、という将来像について書いた。その背景には、“術前”を想定して免疫療法を実施後、手術に移行せずにCRTへと移行した場合でも、CRT先行のPACIFICレジメンと同等かそれ以上の成績が期待できる、つまりCRTに対するinductionとしての免疫療法の有効性が期待できる、というデータがあった(NCT05888402など)。
しかし最近、この考えに待ったをかける論文を見つけた。それは、非切除移行例(57例、90%がIII期)に対する根治的放射線治療の治療成績を解析した国際多施設共同後ろ向き研究(Adib E et al. JTO Clin Res Rep 2025)に対するコメント (Feigenberg SJ et al. JTO Clin Res Rep 2026) として投稿されたものだ。
上述の試験を含め、これまで既にinduction ICI+化学療法後のCRTの結果は複数報告があるが、本論文の重要な点は後ろ向き研究ということだ。つまり、inductionとして免疫療法実施後、(前向きランダム割り付けではなく)“やむなく手術に移行できずに”CRTに移行した場合の成績(=より実臨床に近い状況を想定した結果)が分かる。
ここで個人的に注目したのは、手術ドロップアウトの理由がいわゆる“切除不能(局所・遠隔進行など(本報告では67%)の場合のPFS中央値が12.2ヶ月であったのに対し、臨床的禁忌(同じく26%)の場合のPFS中央値は30.3ヶ月と、予後に大きな差が出たことだ(p = 0.037)。つまり、induction免疫療法で腫瘍が制御されているにもかかわらず合併症等で手術不能となった場合には、CRTが非常に強力なサルベージ・レスキューとなり得る一方で、進行(PD)や縮小不十分(切除不能→切除可能の一発逆転を期待するケースなど?)によるR0切除困難と判断された場合には、手術ができないどころかその後の良好な予後は望めないことを示唆している。また同論文のlimitationとして、induction免疫療法後に手術だけでなくRTすらできなかった症例は除外されている点も注意が必要である。
MDT-BRIDGE試験では、induction免疫療法の積極的な導入戦略において有望な結果が出ている。しかしながら、ヘテロな患者集団である実臨床においては、切除の可否に迷う症例に対してinductionとしての免疫療法にチャレンジするか、従来通り先行CRT後の地固め免疫療法(PACIFIC)がよいのか、現時点では結論がでない。
もうひとつ日本人には特に重要な肺臓炎だが、全グレードの肺炎(pneumonitis)発生率は18%、うちGrade 3以上が10.5%(死亡例1例を含む)とのことで、ICI後のRTに関連した有害事象にも懸念が残る。
以上の結果から、“切除可否の議論の前に「とりあえず免疫療法」”という議論には慎重になる必要性を実感させられた。今後もinduction免疫療法の議論が続くことが予想されるが、その後に手術に移行できなかった症例の詳細な解析(局所療法導入の有無、その種類、予後、等)も重要になってくるだろう。
=最適な治療強度は?=
従来NSCLCにおいては、根治が望めるのはIII期まで、そのキーとなる治療モダリティは局所療法(手術またはRT)、という認識があったが、免疫療法という薬物療法の登場により根治が望めるようになったことが、事態を複雑にしている。
特に切除不能III期では、従来の治療法に“術前”免疫療法を実施する場合、ICI+化学療法→CRTというかなり(IV期よりも⁉)強度が高い治療となる。PACIFICレジメンにおけるchemoやRTの引き算の検討がいくつか検討されているが、同じような引き算の検討は、“induction免疫療法”を前提とした治療戦略の開発においても再考の余地がある部分と言えるだろう。


